1日6席限定の店 うしのみや

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小山薫堂をご存じだろうか。

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私が小学生くらいのころ、『美味しんぼ」や『ミスター味っ子』などの料理対決マンガが多くあった。
料理人同士が同じ食材を使って料理の技術を競い、審査員の解説等を経て判定がなされる、という内容だ。

当時は料理対決ブームだったのか、1990年半ばの深夜には『料理の鉄人』という番組が始まり、料理人(鉄人)と挑戦者が実際に対決するという、それまではマンガの世界でしか描かれなかった凄まじい画がリアルになった。

私は当時、鹿賀丈史が好きで、番組の冒頭で鹿賀丈史がのたまう「私の記憶が確かならば…」というフレーズや、黄色のパプリカをかじる姿を見るまで、眠れずにいた。

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さて。前置きが長くなったが、小山薫堂はその『料理の鉄人』のプロデュースをした人物だ。
その他にも、雑誌『dancyu』での連載をしていたり、「くまもん」の生みの親でもあり、多彩な才能を持っている。
肩書きは、放送作家・脚本家らしいが・・・

料理に幅広く精通したその小山薫堂が、今回紹介する『うしのみや』を総合プロデュースしているとのこと。

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そもそも、『うしのみや』とはなんぞや。
1日6席限定の、”宮崎牛専門店”と言えば伝わるだろうか。
メニューも13000円のコース1種類しかない。
それだけでも特別な空間であることが想像できるだろう。

脚本家がプロデュースした宮崎牛が、どのように演出されているのか、『料理の鉄人』ファンとしては、とても興味のある店だ。

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場所は、シェラトン・グランデ・オーシャンリゾートの1階。
看板が、ない。
『うしのみや』スタッフである執事っぽい初老に気付かなければ、その場を通り過ぎていただろう。

重そうな扉が開かれ通された薄暗い部屋では、小さなワイングラスに入った青汁が出された。
この青汁で、ひとまずお腹を整えるのだそうだ。

一気に飲み干すと、奥の部屋に案内される。
そこは6席が並ぶカウンターしかない。
鉄板を隔てたところに笑顔のステキな女性、今日の料理人だ。

まず、本日使う肉です、と紹介されたのが、こちら。

ひとつずつ部位を紹介してくれる。
全部で約180gだそうだが、これでお腹いっぱいになるのか・・・?
一抹の不安がよぎる。

私が訪れた今日は、日曜日。
なんと、貸切状態!
私の食べるペースに合わせて、私のためだけに肉を“創って”くれる。

最初に出てきたのは「時雨煮のクリームチーズ和え」。
どうしたら時雨煮にクリームチーズを和えようと考えつくのか、感心してしまう。
普通に生活をしていたら出会うことのない2人が、旅の途中で出会ってしまった、しかもかなり相性がよい、
そういった印象を受ける一品だ。

時雨煮のクリームチーズ和え

その後も次から次に出てくる。
なかでも私をうならせたのが「宮崎牛ロースの炭火焼き 煎茶塩を添えて」。
煎茶はその場で高千穂茶を挽いてくれた。
高千穂町のお茶と言ってもあまりピンと来ないと思うが、全国茶品評会で1位を獲得したお茶なんだそう。
そのお茶をのせた炭火焼きのロース。
焼き加減や塩の量、肉の柔らかさが絶妙にマッチしていて、お茶の香りがふわっと口の中にひろがる。
ずっとかみしめていたい衝動に駆られるも、あっというまに口から消えていく。
そんな名残惜しいひとくちだった。

宮崎牛ロースの炭火焼き 煎茶塩を添えて

出てきた料理は全18品。
食材に妥協がない。
そのすべてが宮崎牛と、宮崎県産の食材を使用している。
そしてほとんどの料理が、箸ひとくちで食べられてしまうものばかりだ。
しかし決してものたりないわけではなく。
たくさん食べたから満足するものではない、”食”とはなにかということを考えさえしてしまう時間だった。

そしてこれは”肉の物語”だ。
メニュー全体を見渡すと、ストーリーがある。
小山薫堂はそれを”肉の旅”と言っている。
小山薫堂の意図するそれとは違うかもしれないが、私にははっきりと肉の起承転結を感じることができた。

もしあなたが肉の物語を感じてみたいのなら、一度は訪れるべきだと思う。
すばらしい2時間の旅を過ごすことができることを保証したい。

最後に料理長からいただいたレター
小山薫堂の挨拶、本日のメニューと料理長の名前入り

Beef Atelier うしのみや
シェラトン・グランデ・オーシャンリゾート 1階
TEL 0985-21-1113 ※要予約
料金 13000円のコースのみ
時間 18:00〜20:00